迷宮クロウラ+(ABYSS CRAWLERS plus)[屋根裏ゲームズ]
地上に災厄が訪れ、余儀なく地下に定住を強制された人類達。人類は地下での生活が限界になり再び地上へと目指しますが、地上までの通路には魔物がおり迂闊に手が出せません。博士はクローンの娘を製作し、彼女に地上までの道のりを切り開いてしまうことにしました。
▲核っぽい爆発で都市がど~~ん。その後しばらくしてクローンリリィが解放される姿がオープニングで語られます。
自動生成ダンジョンを駆け抜けるドット絵が美麗なアクションゲーム
本作はステージ自動生成型2Dプラットフォーマーアクションです。プレイヤーは青い髪の女の子リリィを操作して地上を目指します。ドットもきめ細かで可愛らしさ抜群。ランダム生成のフロアを2種とボス戦を1階層として計7階層のダンジョンを駆け上ります。ランダム生成フロアは1エリアの小さなメトロイドヴァニアスタイルマップと認識すると分かりやすいかと思います。各ボスを倒すと、次ステージを新たな中間ポイントとして設定し、ゲームオーバー後は好きな中間地点から探索が可能。
▲ボス戦前後のスチル付きイベント
本作の面白さはまず、リリィの操作的な基本スペックが高いことが挙げられます。迷宮で稼いだお金を使ってスキルを稼いでいくゲームですが、その場合序盤の操作性を制限することになります。しかし、本作は制限されている状態でも操作にはあまり不自由がありません。デフォルトで3段ジャンプが可能。攻撃は剣による近接と銃による遠距離攻撃です。剣による攻撃は真正面だけでなく、自地点よりも斜め一段下や斜め一段上の敵を攻撃可能。銃は弾丸を敵ドロップやショップで購入する必要がありますが、一直線にダメージを与えます。真下や真上にも攻撃可能。そして、空中で攻撃した場合はリリィが軽く空中浮遊するため、次の動作を考える時間ができます。
つまり基本操作が序盤から、ある程度快適です。加えてスキルを覚えていくと新たな戦術ができるように。まず壁滑りで壁にくっついていると速度を下げて下降できるようになり、その後壁ジャンプを覚えると壁にぶつかった時点で3段ジャンプの回数が回復します。これによって、ほぼ永続的に空中ジャンプが可能に。そして弾消しにより剣で敵の火玉などを消せるようになり、さらに弾反射を覚えると火玉を反射させて敵を攻撃できるように。さらに地上ダッシュや空中ダッシュで移動も快適になります。
▲刀は間合いが上下に広い。他のアクションゲームではあまり採用されていない仕様ですが、実に使い勝手がよいです。
操作に関しては、プレイしていて気持ち良さを感じるように細かくチューニングしています。
基本は人間がいる拠点で弾の補充やスキルを覚える準備をしてから、エレベーターでダンジョンに入り込みます。拠点はドット絵の美しさが特に強調されているマップで、欧米のような背景ドットを基調に日本製らしい可愛らしいキャラ達が思い思いに過ごしています。彼ら彼女らは攻略の進行具合でセリフが変化します。ドット絵技術の高さが伺える拠点です。
▲SF世界観であることも実感できる地下都市
ダンジョンは自動生成ですが、横だけでなく縦も大きく作られています。3段ジャンプをフル活用できる広さ。階層を進むごとに敵の種類が増える他、既存的のHPも増加していきます。ダンジョン内にはお金と引き換えに体力を少し回復してくれるシスター、刀を鍛えてくれる鍛冶屋、同じく銃を鍛えてくれる鍛冶屋、銃の弾を補充してくれる職人などがランダムで配置されることがあります。
▲回復役のシスターと銃を改造してくれる鍛冶師。彼らもランダムなので、本作は常に運が付きまといます。特に鍛冶師はその時にお金を所持していることも重要なので、地味に「あ、さっきお金を使わなければよかった」と思うことが何度か。逆に鍛冶師狙いで持ち続けると2連続で敗北してお金が消滅することも。
▲閉じ込められている人を助けると報酬ゲット。こちらもランダムですが、一番の金策でありがたい存在。
ちょっと変わった特殊機械ロボもランダムに出現、こちらはリリィが乗ると何発か敵の攻撃を身代わりしてくれ、さらに銃が撃ち放題。ただし、ジャンプ力が低く1段ジャンプしかできないため、基本は一定場所でだけ使用して使い捨てることに。
▲攻撃というよりは肉壁の防御用に利用していました。
この中でダンジョンのどこかにある鍵を見つけてから扉に入ると次のエリアに進みます。各層2エリアをクリアすると最後はボス戦。前後にはイラストと共にストーリーが進みます。ボスのみは各層で固定です。敵の動きを掴めば強くありませんが、前エリアからの体力回復が無いので、ミスが許されにくい状況が続きます。
姉の屍を超え、クローンが何度もダンジョンに立ち向かう
さて、本作を面白くしている要因の一つは間違いなく操作性ですが、もう1点挙げるとすると運が悪いと簡単にライフが0になる緊張感です。
リリィは操作性にも優れており、刀と銃はダンジョンに現れる鍛冶職人により強化も可能で操作・火力の面では信頼できるキャラです。しかし、紙装甲・低ライフであるため、ちょっとしたミスで簡単にライフが奪われてしまいます。回復の手段も限られています。そして紙装甲以外にもちょっとしたミスを誘う要因があります。
視界が制限されているため(視界を広くするスキルが2段階であります)、慎重に行動しなければ敵が見つかりにくい仕様です。また、地面に棘が配置されていた場合、踏んでしまうとダメージが大きめです(これも半減するスキルあり)。自動生成なので覚えゲーのように行動することはできません。
このちょっとした油断でライフ0になってしまう点は、本作の肝にもなっています。
本作はダンジョンでお金を貯めてスキルを覚えたり、武器を強化しながら先に進めるゲームです。そのため、お金を稼いで拠点に戻ることも必要で、ダンジョン内であるボタンを3秒ほど押下し続け、敵の攻撃を受けなければいつでも戻ることができます。その見極めが本当に難しい。
そしてライフが0になった場合、そのリリィクローンはストーリー上でも死亡します。プレイヤーは博士が生み出した次のリリィクローンを操作することになります。そのため、お金を半分落とします。落とした半分ですが、実は次回プレイ時、前回のリリィが遺体となってダンジョンのどこかにいます。彼女を見つけて調べるとこの半分も回収可能です。
▲前回プレイヤーが操作したキャラの遺体はダンジョンのどこかに放置されています。
ただ、回収する前に再度ライフが0になった場合は、二度と戻りません。補足すると、お金を貯めるゲームでは無いので、そこまで困ることはありません。基本は必要金額が溜まったらすぐ使うようになりますので、全滅で失う金額は敵を数匹倒せば稼げる程度に収まるかと思います。ただ、それでも失うものは失うため、ほど良い緊張感があります。
そして、特に強調したいのが、常に「後ちょっとでいける」という確信を抱きながらプレイしていることです。実際、運が良いとすぐに鍵と扉を見つけてボス戦までたどり着きます。ただ、運が悪いとエリアが始まった途端、さながらモンスターハウスのように敵に囲まれていて、いきなり危機に陥ることも。この博打にも似た、後ちょっとでクリアできる間隔がプレイをついつい継続させてしまいます。実際、スキル取得や武器鍛錬とその階層で敵が落とすお金のバランスも良いため、丁寧にプレイすればクリアできるはずの状態です。そこに、なんらかの油断で敗れてしまいます。この絶妙なまでのバランス感が本作を面白くしていると言っても過言ではありません。
▲鍵を入手するとその階層のマップが確認できるため、どれだけ早くみつけることができるかも大事
私はクリアまで8時間ほどかかりましたが、steamのレビューには4時間との結果も。クリア時間はプレイスキルによって大きく変動しそうです(私は連続で死亡して何度もお金を失うはめに)。ある程度のプレイヤースキルを問われるため、アクションゲーム初心者に勧められるゲームではありません。実際、良いところで運悪く死亡してコントローラーを投げたくなったことも何回か。ただし、スキルレベルや武器などの強化以外にプレイヤースキルの上昇も実感できるゲームのため、ある程度のアクションゲーム好きには充分に楽しめるゲームかと思います。実際、バランス調整には相当時間をかけたような際どい面白さがあります。また、ドット絵や未来アポカリプス的な地下都市含めた世界観など雰囲気も良さげです。繰り返しプレイが楽しく、ボリュームやゲーム内容からすると、とんでもなく安価なゲームです。ちなみにクリア後も拠点で各NPC達と話すことが可能。物語の結果が描かれます。