【サイドビュー推理アドベンチャー】怪異探偵委員会 レビュー

怪異探偵委員会_サイドビュー2

怪異探偵委員会_タイトル
怪異探偵委員会[茸沢しめじ] (ウディコン / ふりーむ)

対象:PC
価格:フリーゲーム

本作は全5章と後日談からなる、ウディタ製の会話中心アドベンチャーゲームです。いちおうホラーアドベンチャーに属する部類ですが、本作を簡潔に述べるなら、ホラーよりもむしろ「課外活動を通して友情を深めていく青春物語」の方が近いかもしれません。もちろん怖いところもあるし、ホラー推理という面でも面白い作品だと思います。
怪異探偵委員会_章

「真実」を追求する頭脳担当のサバッチョ(主人公)と「正義」を信奉し困っている人を助けずにはいられない熱い怪力男のカンちゃんの二人コンビは、学内にはびこる「怪異」の噂から真実を探るため「怪異探偵委員会」を発足、そして困った人が持ち込んだ怪異を調査することになります。そして2話以降はアルビノのヒロインが登場、さらにワイワイガヤガヤとした雑談が多くなり、調査中の会話が面白くなってきます。イベントでも決める時は独特のポーズのドットが用意されています。
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▲まるで性格が正反対でありながら、気が合う二人。
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▲アルビノなヒロイン。

章の流れは「怪異の噂が発生」→「調査開始」→「真相編」の流れです。本作は横スクロール型で作られており、冒頭部と真相はイベントで、調査は横スクロール型の学園内・町を動き回って調査することになります。学内・街並みやそこを歩く2Dキャラは全てオリジナルであり、独特の田舎町っぽい素朴な雰囲気が出ています。
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この中で、学内と町の中を歩きまわり、事件の調査を行うため、様々な人物と話します。怪異に関する噂を入手した時はメニュー画面に記され、推理の参考にできます。
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▲集めた噂の閲覧画面。クリックしないと詳細が分からない点は少々面倒ですが……。

本作は怪異から、それは本当に「怪異」か、実は「人間の仕業」ではないかを調査することになります。例えば幽霊が出る事を調査しているうちに噂から、本当に幽霊だったから退治しなくては、又はそれは幽霊じゃないと確信してしまうかもしれません。ぶっちゃけ、怪異を信じない主人公が推理で怪異をぶった切る事がコンセプトの一つだと思います。
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▲花子さんとかこっくりさんとか王道だけど、この町特有でちょっと亜種になっていることが特徴。

ホラーミステリーではあるけど、推理ものとしては弱めに設計しています。推理苦手な私でも怪異の正体は見えてきます。もう少し具体的に言えば、その章の情報を集めるうちに推理物が苦手であっても真相はほぼ完全に理解できてきます。

だけど、本作の肝は、真相を知った上で、関わった人達をどう幸せにしてあげるかです。真相までは調査で想像できても、この解決法に関しては本作特有の熱さがあります。実直さのカンちゃんと頭脳のサバッチョのコンビで良いように解決していきます。もう1点述べれば「熱い」ことに間違いはないけど、冗長なく簡潔です。そのあたりは文章の読みやすさを感じます。

さて、学内・町の調査では、学内だと学生さん、町内だと主婦やおじさんなどに話しかけて情報を得ることになります。いわゆるモブキャラ達ですが、ほとんどのキャラは複数の章に跨って登場します。すると情報の提供方法に癖があったり、最初は隠れていたけど実はカンちゃんに気があってだんだん積極的になってくる女の子がいたりで、サブキャラそのものも立ち絵が無いのに魅力的に見えてきます。
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また、モブキャラとの会話や、町中でファッション屋や駄菓子屋などを調べると、相方の男と2章以降はヒロインも加わって、それこそ友人同士の日常会話なみにくだらないやり取りや冗談の応酬で会話のキャッチボールを楽しませてくれます。もちろん、この会話関連は同じ場所でも各章で内容が異なります。この何も意味のない会話が良い具合にキャラ達の仲の良さを感じさせてくれて非常に気持ちの良い小ネタばかり。そして、2周目にプレイすると、何気ない会話の中にも伏線が仕込んであったことにびっくり。
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▲サウンドノベルとアドベンチャーの違いと言ったら、このような何気ないフレーバーテキストだと思っているのですが、本作はこれが核心的に作られている気がします。

5章では、男二人の幼い頃からの仲の良さを強調するイベントや、第四章までで、仲良くなったからこそ光るヒロインとのイベントなど、青春面での心のぶつかり合いが面白いシーンが目白押しです。併せて、各章にこっそり仕込んでいた伏線が絡み合って綺麗に回収していくホラーサスペンス部も面白い仕上がりとなっています。後日談も、内容は第5章エピローグから想像は付きましたが、最後のあれは、破壊力あり過ぎです。心がうるっときました。

ようは、起承転結の流れが巧みなんですよね。各章でも調査が終わる頃の転結の流れが上手く、さらに作品全体としての最終章でおこる転結は話を一気に進めたくなるほどの面白味があります。先の展開が読みやすい王道物語の連続ながら、時折プレイヤーの意表をつく演出をしてくるんですよね。

ホラーミステリー好きに加えて、読了感の良い爽やかな青春物語が好きな方も遊んでほしい作品です。プレイ時間は1時間ほど。1時間だけど、中規模な物語がコンパクトにまとめてある感じで、クリア後はそれなりの長さの話を読んだ気分。

ダウンロードはこちら
ふりーむ:怪異探偵委員会
ウディコン:怪異探偵委員会

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