【ラノベ風刑事ドラマADV】“聴”能力捜査官 キキミミ!!:Complete レビュー

“聴”能力捜査官 キキミミ!!:Complete_タイトル

“聴”能力捜査官 キキミミ!!:Complete_タイトル
“聴”能力捜査官 キキミミ!!:Complete[LIKEMAD_GAMES] (ふりーむ / PLiCy / Google Play

対象:PC,Android,ブラウザ
価格:フリーゲーム

国際特別捜査局で捜査官として働いていたヒナタ・スペンサーは日本・桜木町の警察署に出向、配属されたのは未解決事件課。この期待されていない課でヒナタは刑事の兄が行方不明になった14年前の事件を追うことになります。本作はヒナタ視点となり、上司や所長などと協力しながら、町の中で調査していく全10編からなるRPGツクールMV製のサスペンス推理ものアドベンチャーゲームです。第四回 PLiCyゲームコンテストシナリオ部門・金賞 受賞作品。
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システムにもシナリオにも影響する超能力「キキミミ」

まず眼に惹くのはUIのセンス。作風に合うポップで元気が出るオシャレなUI群で統一されています。全般的に色彩のセンスが高いです。
橙と水色の水玉コントラストなメニュー画面に雲のような選択ボタン、そして黒枠で囲ったキャラ。合わせてセーブ画面やキャラステータス画面もメニューとテーマが同一なデザイン。また、一応は謎解きゲーですが、右上にいつもヒントがあり、迷うことはありません。物語を楽しむことに注力できます。このヒントの色使いや枠組みもよいです。また、喫茶店のカーテン、自宅のカーペットなどは明らかに、このメニューUIと雰囲気を統一させています。イベントも写真の見せ方などにオシャレさが漂っています。
“聴”能力捜査官 キキミミ!!:Complete_ステータス
▲メニュー画面
“聴”能力捜査官 キキミミ!!:Complete_紹介
▲初めてキャラと出会った時の紹介。
“聴”能力捜査官 キキミミ!!:Complete_写真
▲ヒナタの人格を形成している兄の写真。
“聴”能力捜査官 キキミミ!!:Complete_フィールド
▲町マップ。この中で進行できる場所が増えていきます。
“聴”能力捜査官 キキミミ!!:Complete_エピローグエンド
▲各エピソード終了時のシーン。1枚絵だと分かりにくいのですが、アニメーションがあって見ていて楽しい動きです。
“聴”能力捜査官 キキミミ!!:Complete_メモ
▲重要な事柄はメモに記されるのでいつでも確認できます。

さて、現実では不可能な超能力・超常現象を含む推理ものは、それだけで他の推理ものと物語の区別化ができます。代表的な例では、各人、超人的な能力を持つダンガンロンパや霊媒の力で死者を憑依させる逆転裁判の真宵など。本作では、それがタイトルにもなっている主人公ヒナタの特殊能力「キキミミ」。

キキミミは探しているものを念じると、その場所から「ここだよ」と声が聞こえてくる「キキミミ」と呼ぶ超能力を使うことができます。本編前に海外で捜査していた時にもその能力をオープンにして活躍していたようで、本編中の警察関係登場人物は皆、この能力を知っており、且つ当てにしている状態からゲームが開始です(信じられないから証拠を、みたいなお約束もありますが)。

この「キキミミ」はシステムとして搭載しています。キキミミが必要な場面では「キキミミ」ボタンが登場。タップ(クリック)するとキキミミモード発動。機械的な音声で「ココダヨ」と一定秒ごとに呟やかれるようになります。町マップや地図などは矢印を、署内など歩行できる場合はヒナタを直接操作し移動することが可能。移動すると呟きの音量が上下したり、ステレオの左右幅が変動します。その中で、最も音量が高く、ステレオの中央(左右の音量が同じ)箇所を見つけて調べると探し物を発見することができます。音を出さずプレイしている方も、デメリットが無いので範囲も狭いので虱潰しの総当たりも不可ではありません(面倒ですが)。
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推理系で特殊能力を使う場合は、メリットと同時に制限やデメリットも用意するのが鉄則です。用意しないと俺Tueeeになって力押しで解決できてしまう破綻がおきますので。キキミミも同様で、「人間を探すことはできず、物しか不可能」という制限が存在します。
これがシナリオに良い方向で作用しており、例えば「現在地が不明なある人物を探したい」状態を想像してください。普通なら詳細な聞き込みをして、人物の居場所を推理して会いに行くのが鉄板だと思います。キキミミは違います。「その人物が確実に所持しているもの」を調べることで一発で場所が分かります。ただ、何を所持しているか分からないので、所持品を調査するという一風変わった捜査方法になります。

また、調査過程で、持っていないはずのものを持っている人物がいたり、見たはずの捜査資料が別の箇所に存在したりと、「キキミミ」ならではのミステリーが味わえます。
“聴”能力捜査官 キキミミ!!:Complete_キキミミ謎
▲キキミミを使ったことでさらに謎が増える。特殊能力ものの面白さは力押しの解決では無く、このような超能力を使っても難事件になるようシナリオに難易度補正がかかっていることがポイントだと思います。

正義感と女の子らしさを併せ持つヒナタを中心とした刑事サスペンスドラマ

物語はキキミミと言う特殊能力があるものの、内容は本来推理ドラマなどで描くような、警察署の人間関係に争点を当てた殺人ミステリとなっています。署長や上司、受付のOLの他に探偵なども登場、話を進めていくと謎が不振を呼び「誰を信じていいの?」というヒナタの心理状況が分かるようなドキドキ感もあります。

ただ、本格的なドロドロ系では無く、ヒナタの超能力やノリの良い会話、ポップなUIなどで、どちらかと言えばライトノベル系推理ものの方が近い部類だと思います。特に会話関係は簡潔な文章の中にこっそり伏線を含ませるスタイルを取っており、普通に会話を楽しみながら後半になった時の伏線答え合わせ会ではなるほどと思うことも何度か。
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▲基本的には捜査関係のイベントなので、事務的な会話なのですが、その人の特徴が分かるような行動やセリフ、且つ簡潔なため面白く、且つ頭に入りやすい文章です。

ただ、論理的な破綻はないのですが、私が悪役だったらしない行動を悪役達が行っていますし、偶然や運に頼っているところもあります。そのあたりはライトノベル路線な事もあり、伏線関連や事件関係の練り込みは本場推理ものに比べると、多少甘いなと感じます。でも、本作の物語的な面白さは、推理方面では無く、むしろドラマ部分。

イギリス育ちのヒナタは「てやんでい」と、間違った日本語を使います。そして社交上手で他の人と話した後はその人に対する考察をするなど。英国ではベテランでしょうが、企業に就職したての新人らしいキャピキャピさがあるんですよね。一般的な社会人らしい可愛さ、犯罪を嫌う正義感、兄が行方不明なことに対する不安が混ざった人物として魅力的に描かれています。また、登場人物との会話後は彼女らしい考察(推理も含めて)をしており、感情移入しやすいキャラ設定となっています。

そんな彼女に命令を下し、自身は社内のお荷物である「未解決事件課」の課長としてだら~っと過ごす上司、いつも喫茶店で適切な助言をし、ヒナタにだんだんと慕われていく探偵、昼行燈だけど何か隠してそうな老齢捜査官など。また、一般人とも知り合いになる機会があり、彼ら彼女らとのやり取りはヒナタの性格故か見ていて飽きません。
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残念な点としては、ヒナタはとある男性と恋愛をしていく恋愛ドラマもあるのですが、過程がほとんど無いため(事件に纏わる事務会話は多いもののプライベート関連がほとんどありません)、急に進展したような感じになります。

物語はサスペンスの王道に則っており、その時信頼できる人、序盤は正体を隠しつつ後半に謎の人物は〇〇さんだったのかとの答え合わせ、危機的状況に陥る緊迫感など話を盛り上げる方向でシナリオを練っています。後半はヤクザ組織も絡む大きな事件になり、伏線が判明する頃には物語的な魅力に染まっていることでしょう。先が気になって勢いで最後まで読み進めれるゲームです。なお、クリアすると外伝的エピソードと「キキミミ」に特化したミニゲームが遊べるようになります。

RPGツクールで表現するアドベンチャーとしての完成度は高く、いわゆる実写ドラマ・映画系統の物語を上手にゲームとして落とし込んでいます。カジュアルな作りで誰でも拒否感無く楽しめそうな点もポイント。

なお、本作は第一シーズンという扱いで、「14年前の事件を追う」謎は解決されますが、いくつか次回作「“聴”能力捜査官 キキミミ!! ~光と影が織りなす輪舞曲~」に向けた伏線が残っています。こちらは2月14日有償販売予定。イギリス・日本の2舞台と拡大し、人物歩行キャラもモダン化、今から先が気になる作品です。

ダウンロードはこちら
ふりーむ:“聴”能力捜査官 キキミミ!!:Complete(DL版)
PLiCy:“聴”能力捜査官 キキミミ!!:Complete(ブラウザ版)
Google Play:“聴”能力捜査官 キキミミ!!:Complete(Android)

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