【爆弾管理AI育成SLG】リトルボムガール レビュー

リトルボムガール_爆弾2

リトルボムガール_メイン
リトルボムガール[ズィーマ] (Google Play / itunes

対象:Android / iOS
価格:広告無料

本作はAIとの対話を通して爆弾の威力を成長させていく爆弾管理AI育成シミュレーションです。外見は爆弾の上に顔だけ人間となっており、AIは明らかに惚れっぽく人間味溢れる性格をしている女の子の人格。最終的には敵国に爆弾を投下することが目的ですが、プレイヤーはどんどん彼女の事が可愛く見えてくるでしょう。果たして本当に別れがきてしまうのでしょうか。
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▲起動した爆弾は女の子?

ズィーマはSF世界観のシナリオ重視を大切にするスタイルでアプリをリリースしています。その世界観でゲーム性が軽くあるノベルゲームを出したのが前作「ポストアポカリプスベーカリー」でした。文字量で言えばそれまでの作品を遥かに凌駕していたと思います。本作は、この文章量を維持して物語性をより引き出しながら「MyLove.」のようなシナリオ分岐や育成要素を兼ねそろえたゲームと言えます。

余談ですが、植木鉢の上に顔だけ女子の信頼を築くゲーム「Tomak ~Save the Earth~」を思い出してしまいました。

爆弾管理AIを教育して貴方ラブにするも良し!黙々と強力な爆弾にするも良し!

主人公は死刑囚である軍人の男性。彼は恩赦を条件に爆弾の教育を担当することになります。死刑囚が採用されたのは、暴発の危険があるため。どうして主人公は死刑囚なのか、爆弾とは何なのか、主人公の所属する国はどんな国?オープニングでは全く語られません。序盤に分かることは未来技術が使われているSF世界が舞台であること、そして爆弾AIがとても可愛くて主人公を「せんせぇ」と慕うチョロインであること。

爆弾AIがヒロインという異色作ですが、ゲームそのものはプリンセスメーカー的な女の子を教育・育成するシミュレーションをスマホ向けに簡易化した堅実な作品です。複雑な分岐を兼ねそろえた物語重視のSLGとしてよく出来ていると感じます。

プレイヤーは「ベンキョウ」を通して「人間」「爆弾」「雑学」について授業を行い、ヒロインに知識を与えます。授業内は必ず最低一回選択肢があり、カイゾうに必要なコインと3つのパラメータ「爆弾力」「ラブ度」「人間性」の値が上下し、総合的な破壊力が変化します。
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▲各科目の選択画面。
リトルボムガール_ステータス
▲選択でステータスが変化。

ジュギョウを行うと、その話題に関連した科目が細分化し新たな項目が追加します。例えば「人間性」についての授業を行うと人間性の下に「性別」「成長」「食事」などの項目が追加され、さらに「食事」の授業を一度行うと「カレー」「ケーキ」などの項目が追加されていきます。また、選択肢の結果によっては、「よろしく、せんせぇ」「せんせぇは爆弾タラシ」「爆弾フェチ」など称号を獲得可能。
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▲各科目によってパラメータ変動率が異なります。
リトルボムガール_授業
▲授業開始。今作はこういう些細な部分でかっこいいUIアニメーションを多用していることも特徴ですな。
リトルボムガール_フラグ
▲特定の称号をいくつか取ることがエンドの条件にもなっています。

このような話題をこなしていくと、爆弾管理AIが知識を蓄えることにより、話題と関連した「CBU」「コア」など爆弾そのものをアップデートできる項目が追加。コインを利用して「カイゾウ」が可能になります。
リトルボムガール_結果
▲特定称号の取得やステータス変化、新たな授業や改造の増加などの結果

カイゾウでは見た目そのものを変化させる「CBU」、爆弾のコア(爆弾管理AI)をアップデートさせる「コア」、爆弾に貼る「ステッカー」と、あと能力変化が一切無い見た目を変化させる「スタイル」を変更可能。意味合い的にはCBUがハードウェア、コアがソフトウェア、ステッカーは外部装置といったところでしょうか。
リトルボムガール_CBU1 リトルボムガール_CBU2
▲CBUは換装でAIハイパライザの外見と能力が変化します。
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▲爆弾の右下に貼るシール。授業時に「爆弾力」「ラブ度」「人間性」の補正を加えるなどの効果があります。
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▲爆弾管理AIの姿そのものを変えてしまうスタイル。ステータスの変化こそないものの、ついつい集めたくなる要素。

このように強化した爆弾の威力は授業を受ける回数8回(課金により11回までアップ)にて、上司によるテストが行われます。この時、一定基準を満たさなければ、強制的に爆弾を投下することになりゲームオーバー。ラストまでのテスト回数は決まっており、全てのテストが終了すると、それまでのフラグによりなんらかのエンディングを見ることになります。
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▲広告視聴にて爆弾の威力を上げてテスト直前まで戻る機能あり。なので、強引なクリアも可能です。

つまり、各種授業を受け、なるべく爆弾力を上げる選択肢をしながらテストクリアを目指していくことが1周目のプレイになるかと思います。通常の選択肢も大事ですが、強力なCBUへの換装とコアをカイゾウすることが一番の破壊力を上げる手段なので、授業の中からこれらをカイゾウするための条件となる授業を探していくことがコツです。ただ、コツと言っても本当に運なので、最終的には虱潰しに授業を受けることになるかと。

とにかく爆弾AIが可愛いすぎる

本作の最も大きくアピールするポイントは完全な物語重視であること。じぃーま特有の笑いと感動をねじ混ぜ、さらにSF世界観をも含んだ切れのあるテキストセンスは過去作以上に健在です。

登場人物は、無口系主人公、爆弾管理AI、爆弾のセーフティ的な役割を負うAIハイパライザ、主人公の上司の計4人です。この爆弾管理AIとAIハイパライザのやり取りは、テストなどのメインイベントだけでなく、全ての「ジュギョウ」「カイゾウ」に用意されています。それも、一言会話だけでなく、ちゃんとした小話として成り立つレベルのもの。ジュギョウでは、一つのテーマ(例えばキモノ、女性など)に対して主人公が教えた内容を爆弾管理AIがどう感じたか、それを別AIが補足、突っ込みを入れる形で話が進みます。

なんと言おうと爆弾管理AIの可愛さが抜群。精神年齢が10代中・後半ぐらいであり、教えることには知的好奇心を示し、主人公が「可愛い」「好きだ」等の褒め方をすると、もの凄くデレてくれます。言葉の喜び具合も素敵で、そして表情も顔を真っ赤にしたり、喜んだり。その他、からかうと「ムっとした顔」、本当に怒ると「青い顔」等で表情豊かであり、見ていて飽きません。
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▲色んな表情とセリフを見せてくれます。

また、爆弾管理AIであるため、価値の相違も面白さの一つ。人間味あるキャラ像で、人間とは異なる価値観を持つことに爆弾管理AIの魅力が詰まっています。ステッカーを変えた時の反応も爆弾を擬人化したらしさが出ており、危ないステッカーほど喜びます。自分を使って爆発することに罪悪感がありません(これは主人公の教育次第で疑問が芽生える成長要素)。コアなどがアップデートされると奇妙なテンションの上げ方をします。

魅力であると同時にコメディとしても読んでいて面白く、「バクハラ(爆弾ハラスメント)」、「爆トモ(爆弾トモダチ)」などの本作珍妙用語がさらに笑いを取ってくれます。

また、無口主人公に変わり、もう一人のAIも素敵。主に説明キャラで、主人公の教育を補足する形で様々な情報を爆弾管理AIとプレイヤーに伝える役割を持っています。これがまたコンピュータ特有の融通が聞かないキャラで(柔軟な爆弾管理AIと対比していることも面白い)、何かあれば主人公に警告したり注意警報を発令したりします。また、爆弾管理AIの突っ込み役を担当しており、コメディ要素を盛り上げると同時に爆弾管理AIの魅力を引き出すキャラとしても成り立っています。
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▲丁寧語の中に皮肉が混じることもあるお茶目なAI。こちらもなかなか良キャラ。
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▲娘の方との軽快なやり取りが面白い。

上司は嫌味キャラとしてテスト時のみ登場。そのため出番は少なめですが、インパクトは強いキャラ。

このようにズィーマテイスト漂うキャラ会話の面白さでプレイヤーを惹きつつ、会話の中に違和感とでもいうべき箇所がポツポツと混じってきます。「過去や自身の記憶について思い出そうとすると記憶が無いのに何かを感じる不思議な状態になる爆弾管理AI」「AIとの会話でじょじょに明らかになっていく死刑囚になった主人公の経緯」「この国は現在どのようになっているのか、敵国は何者なのか」、「特定の会話を行うと爆弾管理AIの記憶を消去してしまうAIハイパライザ」。
リトルボムガール_過去作1 リトルボムガール_過去作2
▲ずぃーまの過去作をプレイしているとニヤっとするこネタがいくつも仕込まれています(未プレイでも問題無し)。

そして、シナリオも中身は「確実に死が分かっている相手との交流」がテーマとして挙げられます。シナリオは最終的に爆弾を投下すべきなのか?爆弾を投下するならどこに投下するのか?と言ったある決断を収束します。また、爆弾を投下することは長い間一緒に暮らしてきた爆弾管理AIの消失を意味します。これはゲーム開始時点から想像が付くので敢えて言ってしまいますが、「投下しない」選択肢もあります。ただし、軍が主人公の命を握っている中、そして爆弾を投下するためにAIの成長をさせている中、どう爆弾を投下させないようにするかの過程を探っていくことがベストエンドへの道しるべとなります。その他、複数のエンドが存在します。。
リトルボムガール_違和感
▲特定の話題を行うと違和感を覚えるAI。
リトルボムガール_記憶
▲特定の話題を行うと記憶を消去しようとするAI。

あと、作者が意図しているか不明ですが、自爆テロに対するアンチテーゼにもなっていると感じます。投下しちゃったらこの子、いなくなる上に大量殺戮犯になっちゃんだよ。

課金の仕組みが割と挑戦してる気がする

課金形式は広告無料+一部課金形式です。この広告無料の匙加減が上手く、普通にプレイする上では各テスト後、つまりシナリオの区切り目に動画広告が出るのみであり、他に広告を見る必要がありません。ただし、ちょっとズルしようと思うと広告を見る必要があるという形式です。

例えば、カイゾウ各種は初めてのアイテムの場合全てコインが必要ですが、広告を見ることで無料になります。また、各期(テスト区分)で1度広告を見ると授業でのステータス上昇値がわずかに上がります。テスト時に広告を見ると一夜漬けをしたとして、その時のみ「爆弾力」が上昇します。

その他、ベンキョウにて選んだ選択肢で望む効果が無かったりデメリットが多い場合は、広告を見ることで1時間前の状態(そのジュギョウを受ける前)まで戻ることができます。テスト時に不合格で爆弾を投下してしまった場合は広告を見ることで爆発力をアップしてテスト前に戻れます。さらには各種エンディング条件を広告視聴で確認することができます。エンドのヒントで必要な称号などは取得して初めて記録され、2周目にも引き継がれます。
リトルボムガール_タイムスリップ
▲広告視聴と共に授業開始前までタイムスリーップ。
リトルボムガール_エンド条件
▲上位のエンディングを目指すとかなりのフラグがあり、そのフラグを満たすためのさらなる条件もありかなり複雑。

また、課金は一般的な広告除去(480円)の他、授業やり直しの広告除去(240円)、エンディングのヒントの広告除去(360円)に加えて広告閲覧では不可能な「テスト期日を8→11時間にする」効果(240円)があります。

私がプレイした感じでは、クリアするだけならこれら広告や課金を一切せずにプレイすることが適正バランスになっていると感じます。難易度は高めですが、決して理不尽でも無く、計算して効果的にステータスを上げていけば、これら機能を使うことなく最後まで進めるでしょう。

ただし、自力クリアで各種エンディングを探しはじめると、有料課金を検討したくなります。というのも上位4つほどのエンドは達成条件に複数の条件や称号が必要となるためです。本作は複雑な分岐のノベルゲームと考えるとかなりの難易度を持ちます。そのため、複数エンドを見るためには、エンディングのヒントを見ながら、各授業の選択肢を全て試しての称号取得確認が必要になります。全てを網羅するならテストまでの授業時間も伸ばしたいところ。それでも一般的な広告無料ゲー程度であり、課金圧はそこまで高いゲームではありません。

ただ、フラグを満たすのが難しいゲームである上に、エンディングのヒントで閲覧できるのは必要な称号や条件までで、「称号の取得条件」「←条件が授業で〇の選択肢を選ぶことな場合に授業を出現させる条件」の2つは欲しいかなと感じます。現時点では、本格的に全エンドコンプを目指すならCBUや称号の取得条件をメモしていき、データベースを自力で作らないと難しいかなと思います。または8時間→11時間を購入して、各選択肢を全て試しながら確認していく作業なども。ただ、作業と言っても会話が豊富なので、全選択肢を選びながらプレイするのも楽しいですが。

結論として、現時点ではエンドこそ気軽に楽しめないものの、物語の質が良いので途中経過では存分に爆弾管理AIの魅力がたっぷりつまったゲームであると言えます。また、「エンドの条件が分かる」&「複雑なフラグ」はアドベンチャーや育成SLG好きには最適解を求めるRTA的なプレイが突き刺さりそうです。私もまだまだ、頑張ってエンドを出そうとプレイ中(たぶん追記します)。

ダウンロードはこちら
Google Play:リトルボムガール
iTunes:リトルボムガール

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