【3D-RPG&乙女ゲーム】Lovelydoll / Wildmachine レビュー

Lovelydoll / Wildmachine_メカバレ

Lovelydoll / Wildmachine_タイトル
Lovelydoll / Wildmachine[spice+] (ふりーむ)
対応デバイス:PC
価格:フリーゲーム

風の精霊に見守られたほのぼのとした都市ウィンギルで過去にトラウマを追い、親友に借金を返すため機械人形を作り上げた青年ノルディック。彼を見守ってきた一人の精霊シルフィは、彼のトラウマを助けようと機械人形に乗り移ります。プレイヤーはシルフィとなり、冒険・レース・ギャンブルなどでお金を稼ぎながらノルディックをはじめとする7人の男女と友好を深めていきます。乙女ゲーRPGとして製作しているようですが、男である私でも楽しめる遊び心満載且つユーザビリティな配慮が行き届いたRPGです。スマイルゲームビルダー製の3D作品。
Lovelydoll / Wildmachine_オープニング1 Lovelydoll / Wildmachine_オープニング2 Lovelydoll / Wildmachine_オープニング3 Lovelydoll / Wildmachine_オープニング4
▲人形に宿った風の精霊が見守ってきた男の子を救うために奔走する物語。

借金返済系からはじまる、ほのぼのとした町での天然純粋系女主人公のお金稼ぎ生活

機械人形に乗り移ったことで人間のように動けるようになったシルフィですが、ノルディックは余計な事をしたと機械人形の購入費を請求してきます。そのため生身を得ると同時に借金を負い、町でお金を稼ぐ手段となります。だけど、シルフィは常識を知らず、サブキャラ(ヒーロー達)は常識知らずばかり。稼ぎ方は大胆なものになります。毎日町を走りまわりながら、レースゲーム、酒場のギャンブル、、ダンジョンを巡っての素材集めなどでお金を稼いでいきます。
Lovelydoll / Wildmachine_借金
▲とんでも無い金額。実際プレイすると思ったより簡単に払えてしまいますが。作中の文章を読むかぎり、おかしいのはプレイヤーの感覚では無くシルフィのチートっぷりだと思います。多分。

レースゲームは独自システムのミニゲーム。走るマシンに乗って1位を目指します。右キーで前方に進みながら障害があれば止まったりジャンプボタンを押下したり。初・中・上の3レベル。プレイヤーレベルはあまり関係無いぐらいに簡単で、むしろマシンのレベルが全てです。レースの賞金にお金とマシンを強化するアイテムを入手できるため、「強化→試合」を繰り返して上級の1位を目指すことになります。
Lovelydoll / Wildmachine_レース1 Lovelydoll / Wildmachine_レース2 Lovelydoll / Wildmachine_レース3 Lovelydoll / Wildmachine_レース4
▲本当に簡単なアクションなので安心。
Lovelydoll / Wildmachine_パワーアップ
▲マシン強化画面

酒場のギャンブルは「ハイ&ロー」。場に1枚トランプを出し、次のトランプが場よりも大きいか小さいかを当てるギャンブル。掛け金は最大で10回まで連続で上乗せが可能。簡単に稼げてしまうルールです。
Lovelydoll / Wildmachine_ハイ&ロー1 Lovelydoll / Wildmachine_ハイ&ロー2

この2つのミニゲームの特徴は、まずそれぞれ独自システムで本格的に作られていること。遊んでいる気分になれます。そしてもう1点は簡単なこと。そのため、プレイヤー視点で見るとジャブジャブとお金を稼ぐことができます。

ダンジョンでの素材稼ぎは、3つのダンジョンで魔物と戦ったりダンジョンに落ちている素材を拾うオーソドックスなシステム。ただし、ダンジョンが小じんまりしているのでサクサクと素材を拾えます。また、敵シンボル接触の戦闘は攻撃・特技・アイテムを選んで敵に攻撃する1VS1のバトル。特技は最大3回まで使用可能で、「ターン消費無く何度でも使える」ことが特徴。そして、フィールドとシームレスで、コマンドを選ぶとポリゴンのフィーリアがポリゴンの敵に向かって攻撃します。そして敵の反撃もポリゴン。つまり、3Dフィールド&2D戦闘なSGBを本作独自にカスタマイズして3D戦闘システムを作り上げています。
Lovelydoll / Wildmachine_戦闘1 Lovelydoll / Wildmachine_戦闘2 Lovelydoll / Wildmachine_戦闘3 Lovelydoll / Wildmachine_戦闘4
▲フィールドがそのまま戦闘画面になります。
Lovelydoll / Wildmachine_素材
▲集めた素材を納品していくことになります。

その他、2人いるメインヒーローから1人を選んで共に冒険することも可能。敵の攻撃力を下げたり、一緒に攻撃するなどの補助を行ってくれます。特に攻撃時はシルフィの代わりに動く見所あり。

自由度が高い故に進む平行的に進むキャライベ

主人公のシルフィは精霊として見守っていても生身としてはゲーム開始時点で生まれたて。そのため、純粋で純真・且つ好奇心旺盛な女の子として描かれています。乙女ゲー主人公としては鉄板ですが、「精霊」という明確な理由があります。また、ドラクエ型無口主人公ですが、そもそも機械人形に音声が搭載されていません。序盤に音声装置を設置するのですが、喋る量は片言なのでユーザーが選ぶ選択肢ぐらいしか喋らないという明確な理由があります。
Lovelydoll / Wildmachine_シルフィ1 Lovelydoll / Wildmachine_シルフィ2 Lovelydoll / Wildmachine_シルフィ3
▲動き回って人形の身体を全力で楽しんでくれているような感覚を与えてくれる主人公です。
Lovelydoll / Wildmachine_メカバレ
▲ちなみにノルディックが外見は手を抜いたらしく、衣服の中はメカバレ状態というマニアックなキャラでもあります。

世界観作りにおいては、しっかりした背景や裏設定から成り立っています。ファンタジー世界にお掃除ロボなどの機械が動いている若干スチームパンクな文明や魔力・精霊など1つ1つに理由付けがあります。ミニゲームが町に存在する理由、キャラの過去を踏まえての性格付けなど。

その影響でメインの登場キャラ達7人、そして町の雰囲気や世界観への感情移入度はかなり高いゲームです。また、考察関係が好きな方も楽しめるゲームかと。全員のキャライベントを進め、それぞれの過去を結び付けると過去の情勢が見えてきます。特に現在の町を取り巻く外部の情勢は一切語られておらず、過去情報の断片から考察のし甲斐があり、ほのぼのした本作とは異なるシリアスな同一世界観続編が登場しても驚きません。
Lovelydoll / Wildmachine_世界観・設定1 Lovelydoll / Wildmachine_世界観・設定2 Lovelydoll / Wildmachine_世界観・設定3 Lovelydoll / Wildmachine_世界観・設定4

さて、借金生活から始まるシルフィの町での生活ですが、ぶっちゃけ本編開始から30分ほどで借金は返済できます。ではゲームは終了なのか?いえいえ、シルフィは借金を返済する間に機械人形として生きることに喜びを感じ始めます。この辺り、文章でしっかりとは語られていないのですが、キャライベでの選択肢や楽しそうに動き回る3Dポリゴンなどの断片情報からはこのように感じます。

つまり、シルフィのテーマは青年を助ける目的で生まれた少女人形が、生きる喜びを得て、「他人のために自分のできることを探す成長物語」とも捉えることができます(あくまで私の主観なので別の意見があるかもしれませんが)。

そこに関わってくるのが7人のサブキャラ達です。シルフィが人形に移ることになったきっかけであるノルディックを始め、主人公にお金を稼ぐことなどの道しるべをしてくれるひょうきんとした青年フクロウ。そしてサブキャラとしてはギャンブラーやレースのエースキャラなど。はたまた主人公に女らしさを教えるお姉さんや盲目の少女などの女性サブキャラも。

特に男性キャラは、「現在は普通に暮らしているけど過去に悲惨なことがあった」など乙女ゲーらしい二面性や「枯れたおじさんキャラ」「アイドル的男性」など乙女ゲーらしいキャラ設定を用意しつつも、乙女ゲーのテンプレート的なセリフや会話はあまりありません。「良い意味で乙女ゲーらしくなさ」があります。また、恋愛よりも友情に焦点を当てているため、過激なセクシーシーンもおさえています。つまり人間味があります。
Lovelydoll / Wildmachine_ノルディック
▲本作のメインヒーロー。怒りっぽい&自虐キャラ。シルフィのおかげでそれが変化していく点が見所。画像はやり込められた時に見せる表情。コメディ系会話でこの表情がよく出てきて好きでした。
Lovelydoll / Wildmachine_フクロウ
▲ノルディックを見守っているもう1人のメインキャラ。シルフィが町で生活できるよう基盤を整えてあげたり、世間話に付き合ってくれたりと面倒見の良い人です。
Lovelydoll / Wildmachine_フェイ
▲レース会場で出会う謎の男性。まあレース会場と言うことでプレイヤー側からはどんな役職のキャラかは登場時からバレバレでしたが。
Lovelydoll / Wildmachine_ラキ
▲ギャンブラー。設定上は一番重い過去を持っているかも。
Lovelydoll / Wildmachine_ダヴィ
▲おっさん枠キャラ。
Lovelydoll / Wildmachine_ネリー
▲盲目の少女。盲目だけど感覚で何でも見通せるキャラ。可愛い。
Lovelydoll / Wildmachine_エルマ
▲女性キャラその2。エルマの女性っぽさを引き出す大事なキャラ。
Lovelydoll / Wildmachine_精霊
▲シルフィは風の精霊のため、同じ精霊と話すことができます。彼女は拠点に居つくため、立場的には情報に詳しい親友枠ポジション。立ち絵無いし出番も少ないけど、姉御肌でシルフィの面倒を見ていてけっこう好きなキャラ。
Lovelydoll / Wildmachine_モブキャラ
▲その他、モブキャラ達もたぶんゲームツールデフォでは無く、自作ポリゴンだと思います。(確信ではありませんが)

メインキャラ2人はシルフィとの交流によって生き様を変えていく乙女ゲーらしいドラマが描かれます。サブキャラ達は男女共にシルフィとだんだん友情を育む様が描かれます。

また、それぞれのキャラの性格活かした掛け合いが面白いし、女性キャラとの友情も良い意味でスパイスとなっています。それ故、男の私も本作を普通のRPGとして楽しめました。
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▲一例として。「スカートの中見えるから気を付けな」という事を忠告してくれる男に対し、シルフィの反応は最後の4枚目。精霊として暮らしてきたため、恥ずかしさがないシルフィだからこそのすれ違い。

各キャラは、「バトルレースに勝ち抜くとイベント進行」、「冒険で得た素材を納品するとイベント進行」、「借金返済でイベント進行」など借金返済に関係のあるイベントのクリアがキャライベの発生条件になっています。また、お店でキャラの好みなアイテムを購入してプレゼントすると各キャラ1日1回ミニイベントが発生します。つまり並行的にイベントが進んでいきます。

そのため、様々な借金返済系のミニゲームや冒険を進めているうちに、並行的に様々なキャラのイベントが発生、そしてプレゼントによるミニイベントも並行的に発生します。言い換えると、フリーシナリオ系RPGをプレイしているみたいな面白さが詰め込まれています。
Lovelydoll / Wildmachine_ヘルプ1 Lovelydoll / Wildmachine_ヘルプ2
▲その他、町にいる多数のNPC達の依頼を達成するミニゲームもあります。

スマイルゲームビルダーの性能を限界まで引き出し、親切で丁寧な配慮が行き届いている3DRPG

本作はスマイルゲームビルダー製の3DRPGなのですが、私が知るかぎり、ここまで上手に同ツールを使いこなしているゲームは初です。

まずは全体的にオリジナルの小物配置やマップ配置の方法で美的景観を意識している点。町の小物関係はSGBデフォルト素材だけでなく、自作素材も投入。タウンマップは明るい街並みの中に高台や港など景観が全く異なる様々なエリアを上手に結びつけており、走る楽しさがあります。ダンジョン探索前の選択画面の1画面マップもシンプルな美しさ。
Lovelydoll / Wildmachine_町1 Lovelydoll / Wildmachine_町2 Lovelydoll / Wildmachine_町3
▲町の景観
Lovelydoll / Wildmachine_ダンジョン選択
▲ダンジョン選択画面。これ、純粋にすごいなと思いました。

イベントシーンはカメラワークが上手く、初町マップ時などの全景の見せ方、キャラの全景からベストなショットで表情が分かる見せ方、キャラのモーションアニメを楽しめる位置などを計算して演出しています。演出に合わせて「天然キャラがダッシュする」「主人公の天然さに対するノルディックの驚き方」などキャラの性格を捉えた面白さを3Dキャラの動きで表現できている点も良かったです。RPGツクールなど2Dの表現ではできない「良さ」を意図的に引き出しています。
Lovelydoll / Wildmachine_イベントシーン1 Lovelydoll / Wildmachine_イベントシーン2 Lovelydoll / Wildmachine_イベントシーン3 Lovelydoll / Wildmachine_イベントシーン4 Lovelydoll / Wildmachine_イベントシーン5 Lovelydoll / Wildmachine_イベントシーン6
▲オープニングの誕生した機械人形が動き出すまでを描いたシーン。各々カメラワークが異なっていますが、それぞれシームレスに動いています。そしてポリゴンキャラの動きもあり、見ていて目を引きます。
Lovelydoll / Wildmachine_全景1 Lovelydoll / Wildmachine_全景2 Lovelydoll / Wildmachine_全景3 Lovelydoll / Wildmachine_全景4
▲全景から主人公の位置までを表示する町の紹介ムービー

主役キャラ達の3Dポリゴンも自作です。特にシルフィは会話時の表情やモーション、そして感情表現のマークに可愛らしさに溢れています。立ち絵のレベルも高く、且つ作風の世界観にぴったりのため、より没入感を高めています。
Lovelydoll / Wildmachine_がっくり1 Lovelydoll / Wildmachine_がっくり2
▲がっかりと顔を垂れる様子

合わせて、扉や出入り口などは印をつけて分かりやすく、ダンジョンは冗長さがなく小じんまり、素材収集系は最終手段の高値購入などの救済要素、ミニゲームは簡単にして雰囲気を楽しむことと物語のスパイスに徹している安心感など、いじわるな点を徹底的に排除してユーザビリティなシステムで統一しています。

本作は登場人物との会話やイベントに重点を置いたゲームであり、快適なシステムや前述の簡単にお金を稼ぐことが可能な借金返済ゲームも含めて、、それ以外は言ってしまえば雰囲気作りです。そのため、プレイヤーに気持ちよくプレイしてもらい、その間に世界観に浸らせると共に、物語の魅力を伝えることに成功しています。また、多方面が並行的に進むことによりノベルゲー的な一本道さが全くなく、RPG的手法でのシナリオが楽しめます。

その上でやり込み要素も適度に簡単です。複数のテーマで銅・銀・金のトロフィーがある実績要素があり、9割が銀になったレベルでクリアできるのですが、この段階は繰り返しの素材集めなど「レベル上げ」作業をほぼ無しで達成できます。その上で金はわずかに頑張れば達成できるやり込み。これの何が良いかと言うと「膨大なやり込みで無いため、挑戦しやすいこと」。どれもあとちょっとで達成できる項目ばかりです。
Lovelydoll / Wildmachine_回想
▲実績は回想で確認可能。その他、回想ではサウンドテストやおまけなどのコンテンツもあります。

プレイ時間はクリアまで4時間ほど。スマイルゲームビルダーとしては高品質で、PS2レベルのグラフィックを持つ良作RPGをプレイしたいなら本作はオススメです。フリーゲームですが、ユーザビリティ・シナリオ構成・立ち絵・3Dモデル・選曲センスなどを総合して有料インディーズレベルの品質を間違いなく保っています。牧歌的な世界観の中、純粋なシルフィと様々な男性との交流を描いた本作は男女共に楽しめるゲームになっていると思います。強いて言うなら、低難易度で楽しく遊ぶこと目的としたゲームなので、ヌルゲーが苦手な方などは駄目かも。

ダウンロードはこちら
ふりーむ:Lovelydoll / Wildmachine

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