Sebastian and Little lady Butler of Love[しましま亭] (ふりーむ / 夢現 / BOOTH / 作者Twitter)
絵本と童話のような美しい世界観と、全ての歩行場所をを手書きの美麗な絵本的イラストのマップで描きあげたウサギのお嬢様と犬の執事による「Sebastian and Little lady」シリーズ3作目のアドベンチャーゲーム。簡単な謎解きとストーリーを楽しめます。
その実態はケモナー、執事とお嬢様、年の差恋愛、最先端物理学など童話とはほど遠い内容も詰め込まれた物語になっています。それでいて雰囲気は童話のようなのびのびした雰囲気が最後まで続きます(緊張感を伴う場面もありますが)。強いて言えばディズニー的な雰囲気に近いかな。
執事とお嬢様が野原でお昼寝をしていると、異なる世界(この世界でも人々はケモナーオンリー)の王女様っぽい影から助けを求められます。お城ごと封印されてしまい、自由に動くことができない、助けて……と。可哀想に思った二人は導かれるままに封印されたお城に辿り着き、彼女を封印している玉を探すことになります。
まず、過去作について。
1作目「Sebastian and Little lady」
執事がお嬢様にプリンを作るため、屋敷内で材料を探す前編と、屋敷内のおばけ騒動を調査する後編の2編からなる短編。本作ほどのレベルや分量では無いけど、それでも独特感のある独自イラストマップを歩き回ることができる貴重な作品。話は純粋なお嬢様と執事の微笑ましいやり取りが中心の内容。この頃から二人共可愛らしいキャラ造形です。クリア時間20分。
https://www.freem.ne.jp/win/game/14820
2作目「Sebastian and Little lady Butler of Truth」
学会発表後の式典に参加するため、雪山のホテルに来た二人、ところが執事がサイフを無くしてしまいます。ホテル内でサイフを探すことに。としたおっちょこちょいさから始まったのほほん作品かと思いきや、後半はドシリアスなサバイバルものに変化。執事の行動力と実行力の凄さが光る作品。クリア時間40分。
https://www.freem.ne.jp/win/game/17263
あと、全作の注意点、一般人にはちょっとお色気がある程度ですが、真のケモナーに関してはR15になりそうなシーンがあります。
3作目
お嬢様は物理が好きで、過去作では執事を救うためだけに、世界の物理学と医学の歴史に残るだけの成果を残すほどの頭脳と執事への愛情を持っている10歳の女の子。執事はそんなお嬢様を赤ちゃんの頃から見つめ続けていた、恰幅の良い男。若い頃はかなりのイケメン。お互い恋心を抱いているけど、執事は妻・子供への愛情で、お嬢様は年頃の恥ずかしがり感情で抑えているこの頃。本作はシリーズ3作目ですが、過去作については上記事柄をおさえておけば、本作もほぼ問題なく楽しめるかと。1作目・2作目の歩行できるまでのオープニングと、2作目のクリア後ミニエピソードを見てると、後半が理解できやすくなる箇所もあります。
舞台は魔法の国。序盤は封印されたお城でお姫様の封印を解く事が中心ですが、中盤以降になると、お城だけに留まらず、異世界の街などにも訪れることになります。過去作でも一際目立つ自作風景マップの中を歩けましたが、本作はさらに1枚1枚のイラストのレベルが過去作と比べて遥かに上達しており、光の加減を表現したイラストも多く、非常に美しい空間内を自由に歩く楽しみがあります。特に魔法(本当は違う理由ですが)によって何でもありな異世界のため、マップそのものも自由な発想が多く、メルヘンな空間に浸ることができます。
▲メルヘンなお城からお菓子の街まで、魔法の世界の不思議な構造物の中を歩き回ります。
今作は主人公達にとって未知の場所です。本作の謎解きは、謎解きそのものよりも、謎を解くためにあちこちウロツキながら、風景や会話を楽しむ事を目的として作られています。そのため、新たな場所に行くたびにプレイヤーと一緒に驚いたり感心したりしています。ウォーキングシミュレータ的な楽しみ方もできると思います(残念な点は時系列によって行ける場所が変化しているため、序盤のマップに後半はいけないことかな)。
併せて、過去作と比較しても遥かに本作のシナリオはよく出来ています。まず、執事とお嬢様の信頼と恋に関して。全般的に執事とお嬢様の微笑ましい会話シーンは散りばめられており、ほのぼのしながらも二人の仲の良さを実感できます。メインイベントでは衝突や嫉妬、その他多々のイベントにてお互いの想いを再確認させ、恋の結末は驚く方法でしっかりと付いています。また、お嬢様は物理学のトップクラスであり、それ絡みの将来についても驚く形で描写されています。
そして、裏の主人公が助けを求めてきた王女様。彼女が何故封印されていたのか、道中、お嬢様は彼女を不審に思う場面が何度かあるけど、正体は何なのか?。中盤以降は彼女の正体を知った上で、彼女に関わる苦境がどう変化していくのかを見ていくことになります。ここで面白いのは、王女様とお嬢様の境遇がある点で実は似通っている物語構造にしていること。後半の執事とお嬢様のやり取りを見て、王女様と●●も似たようなやり取りがあるのかな……など想像の余地が膨らむような作りになっています。
▲封印から解かれた王女様。部屋が散らかっている描写を見てから一気に親近感がわきました。玉座で座っている姿、本作で一番好きなポーズかも。
また、本作初登場のキャラ達も教会の神父の癖に助平な性格をしているおっさん、そこでアルバイトしているちょい悪な口調の女性、どちらも濃い性格をしており、中盤以降からですが、メンバーに混じり賑やかになっています。ケモナーな世界観もさることながらお嬢様の可愛らしさや王女様のいじりやすそうな性格、執事のカッコ良さなど単純に人の性格描写がよく出来ていると感じます。
▲中盤、魔法世界の町を周る時に付いてきてくれる方達。
余談ですが、私のライトノベル的な物理学知識は打越鋼太郎氏の最新作あたりで止まっています。ですが、本作の物理・科学関係の解説が簡潔で分かりやすく面白そうに語るので、色々と再燃しそうです。
クリア時間は1時間。私はまず本作をプレイして、気になって1,2作目を一気にプレイしました。演出力・シナリオ共に3作目は1,2作目と比べてかなり力が入っているため、勧めるなら3作目ですが、物語としては1作目から順々にプレイする方が遥かに楽しめるので、気になる方は是非1作目から。なんといっても、3作目のラストは1,2作目で温めてきた二人の積み重ねの集大成のようなところがありますので。
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ふりーむ:Sebastian and Little lady Butler of Love
夢現:Sebastian and Little lady Butler of Love
BOOTH:Sebastian and Little lady Butler of Love
ウディコン:Sebastian and Little lady Butler of Love