【ADV】どうして勇者様はそんなに弱いのですか(勇弱) レビュー

どうして勇者様はそんなに弱いのですか(勇弱)_ニヤニヤ

どうして勇者様はそんなに弱いのですか(勇弱)_タイトル
どうして勇者様はそんなに弱いのですか(勇弱)[SyUPRO-DX inc.](iTunes)(Google Play)
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勇弱は無駄をとことん省いたシステムと綺麗なボーイミーツガール物語を併せ持ったRPG風ドット絵ノベルゲームです。

ファンタジーなボーイミーツガール物語

時は危険で強大な魔王を倒そうと沢山の勇者が魔王城へ押し寄せる時代、魔王城から最も近い教会に少年エインが住んでいました。教会は勇者達が最後に訪れる休憩場所として利用され、その際にエインは毎回勇者の超必殺技を見せてもらえ、自分が誰かを守れるようになるため、見よう見真似の修行で必死に全ての超必殺技をマスターします。そして勇者達は魔王城に挑み誰も帰ってきません。
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そんな中、史上最弱の女勇者が教会にやってきます。最弱のスライムにも苦戦する女勇者をほっておくことができずエインも参戦、共に魔王打倒を目指します。史上最弱の女勇者と全勇者の超必殺技を覚えてしまった少年の冒険がはじまります。
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ゲームとしては魔王打倒のため、情報を集めて魔王城各階を攻略していくこと。ADVなので基本的に戦闘フェーズは一切ありません。例えば1階はフロア一面にわんさかと敵が沸いています。とても突破できる物量じゃない。どうしたものか、そのため魔王城近くにいる沢山の元勇者達と話すことで情報を集めます。そう、何故か過去にエインが見送った勇者達が何故か魔王城近くで暮らしています。超必殺技と魔王城(特に上階)の記憶を失って……。

話を聞くと「1万匹はいる」「俺の超ダッシュで次階まで進んだ」など勇者達から次々と情報が集まります。エインは大量の超必殺技を持ちます。そして女勇者は最弱と言えども戦略的閃きの才能があります。そのため、勇者達の情報を元にどんな超必殺技を使用するかを女勇者が検討し、そして主人公エインが実際に戦うスタイルです。各階でそのような困難が待ち受けており、勇者達から情報を集めて攻略します。そして、各階を攻略していくうちに勇者達の記憶喪失の原因や主人公達に纏わる身の上話、魔王の特徴などが明らかになってきて最後に一つの線に繋がります。単純には戦闘物語ですが、小さな謎がある→解決方法を探す→小さな謎が解ける→中規模な謎が発生するという構造になっており、戦闘よりもおそらくミステリー物語としても評価できる作品です。
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▲一番最初の謎。魔王城の入り口が氷の扉になっていて入れません。そして魔王城周辺にいる元勇者達に話を聞き解法を探します。そして情報の中から有効な超必殺技を扉へ(4枚目はスクショ取り忘れにより異なる場面の超必殺技選択画面です。)

そして、表向きは魔王討伐系ゲームですが、本質はボーイミーツガールです。戦いの中でエインと女勇者の仲が少しづつ縮まっていく様が描かれます。特に教会と魔王城までの道、魔王城は全10章で行き来することになり、各地が思い出の地となります。孤児として育ち誰からも愛されていないと思い込む主人公、そして同じく弱いために誰からも見向きもされない女勇者、2人の関係はだんだんと信頼に結ばれていきます。しかし物語が進むうちに信頼関係だけでなく、不安や謎が解けるごとに変化していく2人の間柄が簡単に2人が近づくことを良しとしません。
どうして勇者様はそんなに弱いのですか(勇弱)_ニヤニヤ
▲ニヤニヤ。

ボーイミーツガール系は王道中の王道ど直球を貫いていますので、ピュアな恋愛物語が見たい方には特にお勧めしたい作品です。私は小説・ゲーム・映画と様々な媒体で物語を楽しんでいますが、ここまで涙が出そうになるほど感動できた物語もそう沢山はありません。ストアのゲーム紹介文に恋愛のレの字も無いことで、届くべきユーザーに届かないことが勿体ないくらい。なので繰り返しますが、恋愛物語を読みたい方にはお勧めです。

感動的な物語を演出するために最適化されたドット絵システム

さて、もう一つ取り上げたいのは感動的な演出をするためのシステムであることです。シナリオを見せるためなので戦闘は一切無し。マップ数も教会、魔王城への道数マップ、簡単に登れる魔王城のみ。しかも魔王城はある程度進むとショートカットも可能です。(広告を見る必要がありますが)次にキーとなる人物が分かるヒント機能。物語の進行も妨げること無くとことんストレスフリーです。シナリオRPGを見せるため、最大限の工夫をなさっています。先に進めなかった時はヒントボタンで次のフラグ発生場所も分かります(広告見る必要がありますが)。

そして、RPGのようにNPCと話せる機能は健在のため主人公が育った教会の大人達や孤児の面々、様々な勇者達とも自由に会話可能です。そして凄いのは全10章構成ですが、各章で2(多い章は3)ほど勇者全員の会話が時間と共に変化します。各勇者達も全て個性的で熱いので、単純に話しかけることが面白い面々ばかりです。彼ら彼女らも、それぞれ目的や生き様を持っているため、章が進むごとに勇者間どうしの関係性が変わったり、主人公との立場が変化したりと、この世界の一員であることが実感できるキャラ作りになっています。そして、主人公と女勇者との関連性も勇者達との会話中で分かることがあります。
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▲個性的な勇者達、エインが育った孤児院の面々、そして魔王城の守り手達。全員が魅力溢れるキャラとして描かれています。純粋な本当のモブは一人もいません。

どうして勇者様はそんなに弱いのですか(勇弱)_戦い
▲魔王城から魔物が飛び出して付近にいる勇者達に襲い掛かることも。

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▲各勇者達とエイン・ヒロインとの関係や各勇者間どうしの関係も章が進むごとに変化していきます。

また、本作は選択肢がところどころに発生します。1拓の選択肢の場合は単に主人公が喋っていることをアピールするための機能です。また、ボス戦では集めた謎の答えとして超必殺技の選択シーンなどがあります(正解するとかっこいい)。しかし、この1拓選択肢ですが、とある場面になるとプレイヤーと作中キャラの心がシンクロします。ここが本当にすさまじく、本当はその選択肢をタップしたくないというプレイヤー、そんな事はしたくないという作中主人公エイン、しかしそれをしなければいけない状況がある見せ場で発生します。この場は謎が収束した時、2人の愛が極限的に高まった時、そして一番の見せ場で発生してしまうのです。もう泣きそうになりながら選択するしかありませんでした。

さて、もう1点ですが、「思い出」も大切なUIとシナリオがシンクロするシステムです。エインと史上最弱の女勇者は魔王退治の旅で数々の大切な思い出を作り上げます。この内容はUIでいつでも確認可能。この思い出が本当に大切であることが終盤になると明確になってきます。
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▲思い出や出会ったキャラの解説ページ。

このようにシステムを逆手に取ってシナリオ的に感動させる演出が多々ありました。小説・漫画・映画・アニメでは実現できない、引いてはビジュアルノベルでの実現できない、まさにRPG風のアドベンチャーだからこそできる感動のさせ方をしています。もう1点すごいと思う点は特別技術力が必要な演出が少ないこと。頑張ればRPGツクールでも実現できる表現内におさまっています。つまりシナリオとアイデアだけで人を泣かすゲームを作り上げていることです。

プレイは3時間ほど。謎が解かれていく爽快感に王道ド直球のボーイミーツガール的な感動を組み合わせた濃い良作シナリオが楽しめます。

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