【2.5D見下ろし型アクション】ぶんまわしヒーロー / Full Swing Hero レビュー

ぶんまわしヒーロー / Full Swing Hero_オープニング

ぶんまわしヒーロー / Full Swing Hero_タイトル
ぶんまわしヒーロー / Full Swing Hero[Katsumi Suenami]

記憶喪失の少年フォルテが仲間たちと交流しながら、ギルドの依頼で様々な冒険をする3Dアクションゲームです。立命館大学映像学部ゲームゼミの卒業制作作品、と言う名目で無料で遊べてしまう、有料クオリティのゲーム。この品質なら、さらにダンジョン数やギミックを増やして企業から有料発売しててもおかしくない品質です。

様々な武器を次々切り替えての旋回攻撃がもたらす爽快感

攻撃手段は様々な細長い武器。攻撃ボタンを押下すると自キャラがグルグル回って周囲を攻撃、もう1回ボタンを押下するとさらにグルグル回って追加攻撃。その後は少し隙ができるので、敵が攻撃しそうなら避けつつ、コンボが途切れないようさらに攻撃開始。武器の隅っこあたりが一番攻撃力が高いので、クリティカルな位置に調整するのも面白い。

非常に叩き心地がよく、ひと振りで周囲の数多くの敵を巻き込んで気分は三國無双系の爽快感。まずは、この基本のアクションがとても気持ちが良いことに注目です。

ぶんまわしヒーロー / Full Swing Hero_ステージ1
▲棒で殴る、これが面白い。

ただし、どんなに面白くても同じ武器では飽きてしまうもの。そこで本作は武器を変える事が前提の仕様と、一時的なドーピングによるダンジョンごとのレベル製を採用しています(ローグライクのように次ステージに進むとレベル1からやり直すと考えると分かりやすいかと)。

武器はダンジョンの各地に落ちており、一定以上の筋力があると交換可能。ただし、ダンジョン開始時は筋力0のため、取得できる武器に限りがあります。そして成長要素が疲労時のスタミナドリンクによるドーピング。敵に攻撃を続けると疲労ゲージが上がります。そして満タンになった段階で、敵のいない箇所にて休憩すると筋力ゲージが上昇する仕組みです。よって敵と戦うことで、持てる武器の幅がどんどん広がっていきます。
ぶんまわしヒーロー / Full Swing Hero_武器1 ぶんまわしヒーロー / Full Swing Hero_武器2
▲最初は小さな武器も、どんどん大きくなり多くの敵を巻き込んだ攻撃ができるようになります。
ぶんまわしヒーロー / Full Swing Hero_持つ1 ぶんまわしヒーロー / Full Swing Hero_持つ2
▲細長いものは基本的に持てるため、こんな長い柱も持つことができるようになります。

武器は長いもの、短いものなど様々。特に武器ごとにリーチが大きく異なるため、敵が1,2体しか巻き込めなかったのが、画面の半分以上を旋回して5,6匹まとめて攻撃できるようになると一気に爽快感が実感できます。

さらに、その武器の特徴に合わせて筋力ゲージと同じタイミングで、重力のある武器は攻撃力が上昇する「パワーゲージ」、軽装武器の場合はダッシュ速度などが上昇する「スピードゲージ」が上昇します。

最初はダッシュも不可でストレスが溜まるほど遅い通常歩行、旋回範囲の狭い武器だったのが、ダッシュを自由自在にこなし、巨大範囲を周回する攻撃に変化していきます。その間はパワーゲージとスピードゲージを両方均等に鍛えていく必要があるため、武器を切り替え、さらに筋力が溜まった場合は一ランク上の武器に切り替えと、頻繁に武器を切り替えながらダンジョンを探索します。

ダンジョン内は特定の長さの武器が無いと通れないような、本作独特のギミックを用意して、進行誘導をしています。敵も一瞬溜め動作をしてから周囲を攻撃するような変わった雑魚が登場するようにもなります(事前動作を見かけたら避けるヒット&アウェイプレイになります)。
ぶんまわしヒーロー / Full Swing Hero_ギミック
▲例えば、このギミックだと、一定以上長い武器を所持していないと通れなくなります。

これが、次のステージになるとドーピング切れで1からのスタートになるため、このレベル上げの感覚を各ステージで楽しめるんですよね。

で、これだけの仕様、文字にすると少し複雑に感じるのですが、実際にプレイすると直感で操作できます。操作も簡単でチュートリアルも適切、なるべくストレスを与えること無く殴る爽快感を与えることが実現できています。
ぶんまわしヒーロー / Full Swing Hero_チュートリアル
▲仕様は一度に詰め込むことなく、ステージを進むごとに少しづつ増えていくので無理なく覚えれます。また、チュートリアルも分かりやすいです。かなり理想的なチュートリアル。

贅沢で豪勢な素材を短編に凝縮した模範的な卒業制作作品

公式サイトを確認すると製作に関わったのは、各分野を学んだ17名もの学生達。今の時代、商業的な売り上げを考えず、自分の作りたいゲームを15名以上の専門知識を持つメンバーで、全力でゲームを作れる場が卒業制作以外あるのでしょうか?

もちろん卒業制作ゆえ、製作期日に伴う妥協や技術を見せる場としてのゲームの側面も持っています。実質的に全ての機能を楽しめるステージは2つのみです。セーブ関係の仕様を捨てているため、初めから全てのステージを選択できます。物語もそこまで長いわけではありません。
ぶんまわしヒーロー / Full Swing Hero_メニュー画面
▲メニュー画面、最初から全てのエピソードを選択可能です。

一般人としてプレイする私達からすると物足りなさがあることも事実です。しかし、瞬間的に楽しむことができ就職用に技術を魅せるためと考えると実に合理的な仕様です。また、普通の商業的考え方だと、キャラを4名にすると製作費がかかるから3名にしようとなるところ、本作の場合はイラスト系の方を最大限生かすため、キャラ3名を4名にしようと、おそらく逆の発想で製作しています(もちろん、音楽・映像・モデリングなども)。

プロの現場で即戦力となりそうな技術力を持つ方々が、それぞれの工程に全力で取り組んだ本作はインディーズの斬新さと、商業ではできない欲張りさ、そして工業的な品質を兼ねそろえたゲームまで昇華しています。

例えばステージ前後のノベル会話パートは3Dモデリングした可愛い大量のキャラが、会話ごとにアニメーションをします(はっきり言ってインディーズのアクション系短編ゲームで5名以上のキャラがいるのは異常と言えるほど贅沢)。アニメーションに含まれるエフェクトも手作りであり、物語を盛り上げる楽曲も各ステージで異なり全て良さげ。ステージ選択画面のUIも全て手作り感があり、操作性も悪くありません。操作や画面の動きにUNITY特有の癖があまり無いので、アセットをあまり使わずほとんどを手作りで製作した跡も感じられます。全ての製作者の長所をしっかりアピールできています。
ぶんまわしヒーロー / Full Swing Hero_ストーリー1 ぶんまわしヒーロー / Full Swing Hero_ストーリー2
▲ストーリーパートは短めながら、テンポが良くコミカルに進むため、アクションのおまけと考えるとかなり贅沢で面白い。また、ストーリーパートでも3DキャラがLive2D的な動きをして、汗などのエフェクトもある。要点はこの汗や表情、動きをどの場面で使うと最もプレイヤーに感動させられるかが分かっていて、適切なことです。
ぶんまわしヒーロー / Full Swing Hero_オープニング
▲質の高いオープニングアニメーション。エンディングにもこのレベルのアニメーションがあります。

また、これだけ大人数での製作なのにも関わらず、全般的に世界観やゲームコンセプトの統一感があります。ノベル部とアクション部も特に乖離を感じさせず。システムと世界観的なシステムのこじつけ、そんなシステムがあってもおかしくないキャラ性など物語とシステムにも統一性があります。チームとしてのプロマネ力もあります。
ぶんまわしヒーロー / Full Swing Hero_ボス戦
▲ダンジョンの最後にはボス戦もあり。

短いながらも、しっかり楽しめる作品と言えます。ただ、短いと言うのは、ステージ数やシナリオ量と言ったクリア後に感じる短さであり、実はちゃんとプレイすると2時間ほど楽しめるボリュームであったりします。ブンブン振り回すアクションとしての楽しさと、総合的な高クオリティシーンやアニメーションなどで一種の芸術とも言える作品になっています。こんな贅沢な規模で作られた作品が無料なので、是非手に取ってみてください。

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