【動く中華活劇ビジュアルノベル】キョンシー×タオシー レビュー

キョンシー×タオシー_リンリン3

キョンシー×タオシー_タイトル
キョンシー×タオシー[電動伝奇堂] (公式サイト / Steam)

執筆時点で公開している第一部3章までの感想です。

本作は道士の少女と元殺手の弟子のコンビが、道術を用いて欲望を満たすものを倒していく、中華アクション活劇のビジュアルノベルです。

ノリは少年漫画な中国活劇アニメーションビジュアルノベル

山奥で500年の修行をした道士の少女リンリンは仙人を目指すも余命1年となり、弟子を取るため下界します。そこには妖怪に襲われている少年ルアンの姿があり、彼を救い、彼をそのまま弟子とします。また、ルアンはある犯罪組織の殺手でしたが、逃亡の最中にリンリンと出会うことになり、彼女に何かを感じたため弟子となります。しかし、彼には犯罪組織の追手がかかっており、なし崩し的に犯罪組織、道術を悪用する道士の存在が明るみに出て、二人は巻き込まれていくことになります。
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中国古来数千年の歴史を誇る道術を用いる武侠、中国の犯罪組織との共闘や対立を描く中華ノワール、タイトルにあるキョンシーをはじめ妖怪が共存するオカルト(霊幻道士を思い出します)など中国の様々なジャンルを混ぜ合わせた雰囲気。でも、それらはミックスしつつもプレイヤーに押し付けることなく、ノリは少年ジャンプの「熱血と友情と勇気」を混ぜ合わせたような少年漫画に近い作風です。

山奥で500年の修行をした道士であるリンリンは山奥にいたため、道士としては天才でも世間知らずで無知。その変わりに正義感が強く、特に道術を悪用する輩を止めさせようとします。殺手として育ったユアンは、狂信的な教育を受けたため一般常識があっても、殺人にかけてはピカ一。また、世話焼きな面もあり、リンリンを喜ばせようと行動します。

二人の相性は抜群です。

リンリンの世間知らずは日本で言えば江戸時代の人間が急に現代に現れたようなもので、文明機器に驚く鉄板ネタはもちろん、戦いのシーンでは銃に興味深々だったりと本作ならではのネタも。また、ルアンの食べ物に喜び、景色で笑うその可愛らしい姿は萌え要素全開です。ビジュアル面でも可愛らしさを際立たせる表情を多数用意。仙人としての凄さもあると思うけど、心の善さとその笑顔で人に善性を伝染させていく人柄が一番の武器かも。
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▲表情豊かで見ているだけでぽわぽわしてくるリンリン。
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▲決める時は決めます。

ルアンは元殺手ですが、序盤はその面影を出さないようにしています。そのため、面倒見のよいちょっと頼れるお兄さんみたいなイメージ。リンリンの話に付き合う姿は子供を見守る大人そのものであり、見てて微笑ましい姿が多数。その一方、戦闘時の彼が登場した時の心強さなどヒーロー的役割も担っています。
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▲普段の剽軽な表情と戦闘時の鋭い表情の落差が激しいキャラ

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▲笑いながら暗殺でき、裏で何を考えているか分からないキャラ

基本的にはルアンとリンリンの2人を中心に物語が進みますが、犯罪組織の殺手の女性達(何故か男が登場しない)や、事件の黒幕など多数のキャラが登場。

日常シーンはのほほんとコメディしつつも、アクションシーンになるとシリアスな展開に早変わりです。
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根幹に、「不老不死に至る手段」が一つのテーマにあって、本作は不老不死を目指すことそのものは悪と断じていません。主人公達が目指しているのは、心を清らかにして仙人になることで不老不死を目指す正攻法に対し、生贄など邪法を用いて不老不死を目指す方法があります。主人公達の目的は、1年以内に仙人を目指すと共に、これら邪法を使う道士を無くすことにあります。

アニメーション映像で楽しむビジュアルノベル

普通のビジュアルノベルの立ち絵やCGは文字の補完的な意味合いが強いのですが、本作は逆でビジュアルの補完的な意味合いで文字を読むような印象です。一番近い媒体は「漫画」ですね。公式で「動く、とにかく動くめっちゃ動く」と述べており、アニメーションをふんだんに利用しています。

動くビジュアルノベルと言えば最近では「ネクロバリスタ」のような3D技術を用いての表現手法が注目を集めています。UNITYやUE4などの3Dゲームエンジン、Live2DやSpineの2D自動アニメーションを駆使しての技術的な進歩によるビジュアルノベルの変化の兆しは見え始めています。その意味ではビジュアルノベルは変革の時期を迎えています。

本作が特に素晴らしいのは、UnityやLive2Dなど最新技術に頼ったアニメーションを使用していないことです。

本作はセル画アニメ、立ち絵の移動やエフェクト表現、背景と立ち絵の組み合わせやカットインの挿入など古くから使い古された技術でアニメは表現されています。また、立ち絵の差分や一部セルアニメによる髪が揺れる・目が動くなどの表現がされることもありますが、差分の数もそこまで多くありません。ただし、CGはここぞというばかりに登場しますし、立ち絵などを切り貼りし、独自にコーディネイトやGUIを用意してわざわざ作ったフォトショ加工レベルの1枚絵やカットインは山ほど用意されています。

そして、それら素材の料理の仕方が凄まじいの一言です。

まず、会話1文1文に対して、表情の変化、カットインの挿入、立ち絵が簡易的に一方方向に移動するだけのアニメーションが展開されます。ビジュアルノベルの文章が全て出て1回ではありません。会話1回に対して1アニメーションです。しかも頻繁に小ネタ的なカットインやCG切り替えが発生することもあります。こちらも会話1文1文に対してです。

さらにカットインでも、立ち絵との組み合わせ、3画面分割して、それぞれの画面でキャラ表示+キャラが下から上へアニメーション、背景の変更の混ぜ合わせ、同じCGだけど吹き出し文字を変えることでの印象の変化なども用いています。

コメディなシーンでは可愛らしさやキャラの魅力が伝わりながらも、プレイヤーが笑ったり目を惹いたりできるように工夫し、逆にアクションシーンはかっこ良さを引き出す演出の数々。
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▲一例として短時間にどんどん画面変化するパターン2種の紹介。

併せてテキストの良さにも言及しておきます。中国もののため、日本人に馴染みのない言葉がそれなりに登場します。が、理解がし易いです。明快で分かりやすく簡潔に説明しているためです。ビジュアルノベルの1ページぐらいにまとめられています。また、難解用語はなるべく連続して出さずに、説明を入れたら日常シーンで和ませたりアクションシーンで怒涛の展開に発展させています。そのため、少しずつ本作の用語や世界観を理解していくことができます。

また、説明以外の文章もなるべく簡潔に分かりやすく書くことは意識しており、短い言葉でスピーディーな展開で進みます。本作の場合は説明やアクションシーンにアニメを多用しているため、あまり文字に頼る必要が無い点が生きています。まさに文字とビジュアルを融合する一つの完結系になっています。

なお、もう一つ、賛否両論がありそうですが、本作が特殊なことを述べておくと、本編の表示中、カットインやCG、それからローディング待ち受けなどではパロディや本編の事柄に対する突っ込み的な内容を多量に含んでいます。パロディはそれこそ同人らしく、アニメから映画、元となる中国創作から最近の時事まで、かなりギリギリに攻めています。突っ込みは特にシリアス系などで、この人はこう思っているのだろうなどの内容をコメディ風に表現しています。
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プレイ時間は執筆時点の1部第3章までで約2時間ほど。1部4章までが無料で、2部が有償となります。普通のビジュアルノベルでは製作側の時間やコスト的な関係で技術に頼ったり省いたりされる部分に全力で振りかぶっている凄さが実感できる作品です。いや、正直、時間的コストかかりすぎるのが目で見て分かるレベルなので、コスト度外視の同人でしかできないレベルです。

ダウンロードはこちら
公式サイト:キョンシー×タオシー 体験版(第三章まで)

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